今、世界各国で白ワインの需要が急増しています。80-90年代のバブリーでたっぷりした食事のスタイルから脱して近年は”ヘルシーブーム”。和食も大人気です。すっきりとした味付けや、素材そのものの味(できればkm0)、を重視したスタイルが求められています。合わせるワインのテイストも、樽香が強いどっしりとした赤ワインよりも、軽い味付けのお料理に合わせやすいすっきりとした白が自然と求められるようになりました。
加えてナチュールワインの台頭。80年代ワイン業界の王座に鎮座していたフライング・ワインメーカーが技巧を凝らして創ったワインよりも、ぶどうを主役に据え、何も加えず何も引かない”ハンズオフ”栽培・醸造で醸された素肌美人のようなワインが認証されるようになります。そして、SO2(酸化防止剤)をも頑なに拒む生産者、スタイルが熱望されるように。素肌美人ワインの味わいは、フランスではGlou Glou(グルーグルー、つまり日本語でゴクゴク)、日本では”薄旨(うすうま)”と表現される、アルコール度が低めで、口当たりが軽い、喉越しのいいスタイル。白ワインも然り。樽熟成を経てバニラの香り高いどっしりとした白よりも、きりっとした酸味の効いた飲み口のワインが好まれるようになりました。
商売的視点で見れば、1杯でお腹いっぱいになってしまう重厚なワインより、飲みやすくて1本開けちゃったという方がありがたいことは確かです。
スペイン、特にフランスに近いカタルーニャ地方のアンテナの高い生産者は、その動きを早くから察知。醸造スタイルを地中海の燦々輝く太陽に育まれた果実味を控えめにして、北ヨーロッパやスペインでいえば大西洋沿岸のワインの味わいをイメージした醸造スタイルにシフトします。収穫の時期を早めて酸を強調したり、本来ならしっかりと抽出されるべきブドウのエッセンスをワインに落とし込む作業を短縮、または加減して、淡い・薄いスタイルのワインを造るようになりました。
悲しいことに、その土地の気候条件や伝統的な造り方を尊重するべきワイン造りが、”売れ筋ワイン”ぽくなるために、矯正されているように感じる時もあります。エッセンスの抽出を避ける結果、芯のない、中身がスカスカのワインも見られるようになります。
”キリッとした酸味が際立つ”、”すっきりとした飲み口”のワイン。
美味しいですよね。私も好きです。最近よく聞く”重心高め”のワインです。私はこの言葉を聞くと、可憐なバレリーナがターンしている姿を想像してしまいます。
でも、”アルコール度が低くて酸味の高い、重心高めのワイン”は、冷涼な気候と日照時間に大きく左右されるので生産地域が限られます。フランス中部が最南端でしょうか?南仏より南・地中海と大陸生気候で造られるワインは対象外です。
スペイン内陸部や地中海沿岸で造られるワインの特徴は、成熟した果実味、骨格(ストラクチャー)が主役であること。アルコール度が高いだけではありません。酸味もありますが、表立って主張してきません。アルコールやタンニンをまろやかにするために、赤ワインは樽熟成を経ることが多いです。そのため、すきっと爽やか系の果実味にはなりません。日照時間が長く、果実味があるので、どうしてもワインの飲み口の重心が低く(つまりどっしり)なりがちです。熟した果実香、時には高いアルコールから生まれる独特の香りがあるので、これを敬遠されることも多いです。
でも、重心低めのワインも、高めのワインもそれぞれ美味しいんです。要はプロポーションが良くて、バランスが取れている、そして緻密であること。
可憐なバレリーナも、ボディーのバランスが取れているからこそ踊る姿が可憐に見えるのであって、実はアスリートのようなしっかりとした筋肉に支えられていることはよく知られています。だからこそ、表現豊かで観客に訴える力がある。ワインも同じで、本当に美味しいワインは、飲み手に訴える力があります。
飲み手に関していえば、ワインの個性を分析し、本質、つまり”よさ”を感じ取ることができる。そして味に関する一つの評価軸にこだわることなく、”恵まれた自然、丁寧に耕された土壌から生まれた良質の果実を、矯正せずに自然のまま醸して造る”というワイン造りの基本を守って造られているかを理解できるか。私が常に心がけていることです。高いワインがからと言って、そうとは限りません。
畑とワインが一つの線上にあって初めて、完成すると考えています。